学会ポスターの印刷と会場の光|A0の大きさで色の見え方が変わる(第5回)
ポスターの色は、パソコンの画面の上で決めます。けれども読み手が見るのは、A0の大きさに印刷され、会場の照明に照らされた紙面です。画面の小さな見本で選んだ色は、面積・印刷・照明の3つによって見え方が変わります。第5回では、それぞれの変わり方と、印刷の前に確かめる方法を解説します。
— 面積効果と、画面・印刷・照明による色の変わり方
原則 1大きな面ほど、明るく、あざやかに見える(面積効果)
同じ色でも、塗る面積が大きくなると、明るさやあざやかさの見え方が変わります。この現象を面積効果と呼びます。国際照明委員会(CIE)の技術報告 CIE 208:2014 では、視野の20度を超える大きな色は、実験室の試験で小さな色よりも明るく、あざやかに見えたと報告されています。
面積効果は、面積の大きい色ほど強く効きます。ポスターでは、次のように使い分けます。
- 面積の大きい色(見出しの帯・メインタイトルの帯・節の色面):あざやかさを控える。淡い色は思ったより白っぽく見えるので、色を感じる程度の淡さにする
- 面積の小さい色(図の強調・マーカー):あざやかな色を使ってよい。面積が小さいため、強く出すぎない
原則 2画面の色と印刷の色は、出せる範囲が違う
パソコンの画面は、赤・緑・青の光を重ねて色を出します(RGB)。印刷は、シアン・マゼンタ・イエロー・黒のインクを重ねて色を出します(CMYK)。この2つは、出せる色の範囲(色域)が違います。画面でしか出せないあざやかな色は、印刷するとくすみます。
- あざやかな青緑・緑・青紫は、印刷で特にくすみやすい
- 画面で「蛍光のように」見える色は、印刷では同じに出ないと考えておく
- 色を合わせたいときは、試し刷りで確かめる。印刷会社に頼むときは、色の値(CMYK)で伝える(第1回)
布に印刷するポスターでは、紙よりも色が淡く、輪郭がにじんで見えることがあります。細い線と淡い色は、布ではさらに見えにくくなります。
原則 3会場の照明で、色の見え方が変わる
同じポスターでも、照らす光によって色の見え方が変わります。
| 光 | 見え方の変化 |
|---|---|
| 電球色の照明(色温度 約2,800K) | 全体に赤み・黄みが増す。青や紫はくすんで見える |
| 昼光色の照明(色温度 約6,500K) | 全体に青みが立つ。赤や橙は落ち着いて見える |
| 薄暗い会場 | 赤は暗く沈み、緑から青は比べて明るく見える(プルキンエ現象)。赤の強調は、明るい会場のときより目立たなくなる |
会場の照明は選べません。どの光でも伝わるように、強調は色相だけでなく明るさの差でも付けておきます(第2回)。明るさの差は、照明が変わっても残ります。
原則 4印刷の前に、実物の大きさで確かめる
画面の上で全体を縮小して見ているかぎり、面積効果も印刷の色も分かりません。印刷の前に、次の3つで確かめます。
画面では全体が小さく見えるため、色が控えめに感じられます。A0に印刷すると、帯の面積が大きくなり、色が強く出ます。帯の色をあざやかにするより、図の強調色を1か所はっきり付ける方が、紙面にめりはりが出ます。
今日からできるチェックポイント
- 見出しの帯など面積の大きい色は、あざやかさを控えてあるか
- あざやかな色は、図の強調とマーカーの小さな面積に限っているか
- 画面でしか出せないあざやかな色(蛍光のような色)に頼っていないか
- 強調は、色相だけでなく明るさの差でも付けてあるか
- 一部を実物大で印刷し、離れた距離から確かめたか
- 印刷会社には、色の値で伝えているか
A0の原寸で書き出して、確かめる
- PDF 出力 — 原寸の PDF を書き出し、一部を倍率100%で印刷して色の強さを確かめられます。
- 配色のプリセット — 1色目と2色目の関係が設計済みのプリセットから選べます。
最終回は「色の見え方の多様性」です。色の見え方は、色覚の特性や年齢によって人ごとに違います。誰にでも伝わる配色にするための手がかりの重ね方を解説します。
※本記事の図は、ポサコの作例用に自作したものです。面積効果は CIE (2014). Effect of Stimulus Size on Colour Appearance. CIE 208:2014 の要旨によります。色温度は一般的な照明の目安です。