学会ポスターの表と図解|数字を読ませるか、差を見せるか(全5回・第3回)
論文の表をそのままポスターに貼ると、読み手は多くの数字の中から差を探すことになります。表は、正確な値を読んでもらうためのものです。差や傾向を一目で見せるためのものではありません。第3回では、次の3つを解説します。表を残すときと図に変えるときの見分け方、表を残すときの整え方、表を1枚の図に変える手順です。
— 数字を読ませるか、差を見せるか
原則 1数字そのものを読ませるなら表、差や傾向を見せるなら図
表と図は役割が違います。表は、個々の値を正確に取り出すためのものです。「対象者の平均年齢は何歳か」「各群の人数はいくつか」に答えます。図は、値どうしの関係を一目で見せるものです。「どちらが大きいか」「どれだけ違うか」「増えているか減っているか」に答えます。
ポスターの「結果」で伝えたいのは、ほとんどの場合「差」です。そのため、結果の表は図に変える候補になります。一方、対象者の背景(年齢、性別、疾患の内訳)のように正確な値が要る情報は、表のまま整えて残します。
| 表のまま残す | 図に変える |
|---|---|
| 対象者の背景・基本属性(年齢、性別、人数) | 群の間の差(主要な評価項目の比較) |
| 正確な数値を引用してほしいとき(係数、信頼区間) | 時間や用量に沿った変化 |
| 比較の軸が複数あり、1つの図に収まらないとき | 項目の大小の順位 |
| 行が少なく、ひと目で読み切れるとき | 行が多く、傾向だけ伝わればよいとき |
原則 2表を1枚の図に変える手順
結果の表を図にするときは、次の3段階で進めます。
原則 3表を残すなら、罫線を引かず、数値を右にそろえる
対象者の背景のように表のまま残す情報も、論文の書式のままでは読みにくいです。整え方は次の5つです。
- 縦の罫線を引かない。横の罫線は、見出しの下と表の外枠だけにする。行の区別は、罫線ではなく1行おきの薄い色で付ける
- 数値は右にそろえ、小数の桁数をそろえる。桁がそろうだけで、最大値と最小値を見つける速さが変わる
- 単位は値に混ぜず、見出しに書く。「79.4歳」「54%」ではなく、見出しを「年齢(歳)」「女性(%)」にして、値は数字だけにする
- 文字の列は左にそろえる。見出しのそろえ方は、その列の値と同じにする
- キャプションは表の上に置く(図は下、表は上が慣例)。行数はひと目で読み切れる範囲に絞り、残りはQRコードで論文に案内する
原則 4フロー図・模式図も「本筋だけ」
対象者の選定の流れや研究の手順を示すフロー図も、表と同じ考え方で扱います。論文のフロー図には、除外の理由や枝分かれがすべて書いてあります。ポスターでは本筋の1本だけを残し、枝は人数をまとめて1つの箱にします。矢印の数が減るほど、読み手は流れを追いやすくなります。
- 箱は4〜6個を目安にする。それ以上になるなら、枝分かれを1つにまとめる
- 箱の中は「段階の名前+人数」だけにする。理由の列挙は、QRコードで論文に案内する
- 箱の中の文字も、ポスターに置いた大きさで24pt以上にする(第2回の軸の文字と同じ)
表計算ソフトや論文のPDFから切り出した表は、ポスターに置くと文字が小さすぎます。表はポスターの上で作り直すか、作図ソフトで整えてから、本文と同じ程度の文字の大きさで入れ直します。
今日からできるチェックポイント
- 結果の表のうち、結論を担う行を1つ決め、差を直接示す図にしたか
- 表のまま残すのは、正確な値が要る情報(背景・人数)だけか
- 残した表は、縦の罫線なし、数値は右そろえ、単位は見出しに、となっているか
- 表のキャプションは上、図のキャプションは下になっているか
- フロー図は本筋1本、箱は4〜6個に収まっているか
表はポスター上で作り直せる
- 表のセル — 表はポスター上で直接作れるので、画像で貼る必要がありません。文字の大きさは本文と同じ基準でそろいます。
- 図と表のキャプション欄 — 図は下、表は上。キャプション欄の位置がセルごとに用意されています。
次回は配色です。色の役割は、区別・数値・強調の3つだけです。区別は3〜5色まで、数値は濃淡、強調は1色とグレー。色の見え方の違いや白黒印刷にも耐える配色を解説します。
※本記事の図と表は、ポサコの作例用に自作したものです。研究データ・氏名・所属はすべて架空です。図の原則は一般的な作図・視覚化の考え方と、Web上で全文が公開されている Claus O. Wilke『Fundamentals of Data Visualization』に基づいています。