学会ポスターの棒グラフ・折れ線グラフ|部品をいったん外し、4か所を直す(全5回・第2回)
ポスターでいちばんよく使うのが、棒グラフと折れ線グラフです。そして、いちばん雑になりやすいのもこの2つです。作図ソフトの初期設定のまま貼ると、凡例と図を往復しないと読めません。軸は途中から始まり、文字は1m離れると読めません。第2回では、初期設定の図を「部品をいったん外し、4か所を直す」手順で、結論が見える図にします。
— 部品をいったん外し、4か所を直す
どちらも同じデータです。Beforeは「事後の得点」を、Afterは「伸び(事後−事前)」を描いています。伝えたいことが「伸びの差」なら、差を直接示す図にします(第1回)。そのうえで、図の整え方を見ていきます。
原則 1作図ソフトで、初期設定の部品をいったん全部外し、必要なものだけ戻す
この原則と次の原則2は、ポスターの上では行いません。図を作るソフト(PowerPoint、Excel、統計ソフトなど)で行います。作図ソフトの初期設定の図には、データ以外の部品がたくさん付いています。枠線、目盛線、凡例、影、立体効果、すべての点に付いた数値などです。これらをいったん全部外し、読むのに必要なものだけを戻します。部品を足すのではなく、外すところから始めると、図は整います。
- 外す:外枠、縦の目盛線、影・グラデーション・3D、すべての点に付いた数値
- 薄くして残す:横の目盛線(薄いグレーにする。読み取りたい値の方向と直交する線だけ)
- 戻す:軸の名前と単位、人数(n)、基準線(0や100など。要るときだけ1本)
原則 2作図ソフトで4か所を直す
1. 棒グラフの目盛りは0から始める
棒グラフは、長さで値を比べる図です。縦軸を40点から始めると、60点と70点の棒の長さは2対3になります。実際の差(1.17倍)より大きく見えます。差が小さくて棒では見えないときは、目盛りを途中から始めるのではなく、棒をやめて点で示します(ドットプロット)。点は位置で値を示すので、目盛りが0から始まらなくても誤解を生みません。
2. 凡例を使わず、棒や線のすぐ脇に名前を書く
凡例は、色と名前の対応表です。読み手は、図と凡例を往復しながら読むことになります。ポスターは短い時間で読まれるので、往復のぶんだけ伝わらなくなります。群名は棒の下か脇に、値は棒の先端に直接書きます。折れ線グラフなら、線の末端に名前を書きます。
3. 並び順に意味を持たせる
項目に自然な順序(時間、用量、段階)があるときは、その順を崩しません。順序がないとき(群名、診療科、地域など)は、値の大きい順か小さい順に並べます。作図ソフトが入力順に並べたままだと、棒の高さが不規則に上下します。読み手は、差を探すところから始めることになります。
4. 軸の文字を、ポスターに置いた大きさで確かめる
作図ソフトの画面では読めても、ポスターの上に縮小して置くと、軸の文字は小さくなります。ポスターに置いた状態で24pt以上(A0判の場合)を目安にします。本文(32ptが基準)より少し小さい程度までが、読みやすい範囲です。確かめ方は、ポスター全体を画面上で25%程度に縮小し、軸の数字が読めるかを見ることです。
項目名が長くて軸の文字が斜めや縦になるときは、横棒グラフにします。斜めの文字は、読み手に首を傾けさせるだけです。
原則 3折れ線グラフは、線の太さ・名前の位置・本数を整える
- 線は目盛線より明らかに太くする。ポスターでは、画面用の2〜3倍の太さが目安
- 名前は線の末端近くに書く。名前の上下の並びは、線の並びと同じにする。凡例は使わない
- 本数は4〜5本まで。超えたら、注目の1本だけに色を付けるか、図を分ける(縦軸の範囲はそろえる)
- 欠けた時点は線でつながない。測った点に印を付け、欠測の区間で線を切る
- 順序のない項目を線で結ばない。群名や診療科を線でつなぐと、実際にはない連続した変化があるように見える。棒グラフにする
色で群を区別しているつもりでも、読み手には「どの棒を見ればよいか」の合図が消えています。強調したい棒だけに色を付け、残りはグレーにするのが基本です。配色は第4回で扱います。
今日からできるチェックポイント
- 枠線・縦の目盛線・影・3D・すべての点の数値を外したか
- 棒グラフの目盛りは0から始まっているか(差が小さければ棒グラフをやめて点にする)
- 凡例を使わず、群名と値を棒や線のすぐ脇に書いたか
- 順序のない項目は値の順に並べたか(時系列・段階はそのまま)
- ポスターに置いた大きさで、軸の文字が24pt以上あるか
- 折れ線グラフの線は4〜5本までか。欠測の区間で線を切っているか
直した図に、その場で差し替えられる
- 図の差し替え — 作図ソフトで直した図をPNGで書き出し、ポスター上の図のセルに入れ直すだけ。配置とキャプションはそのまま残ります。
- 全体プレビューで縮小確認 — ポスター全体を縮小表示して、軸の文字が読める大きさかをその場で確かめられます。
次回は「表」です。数字を読ませたいときは表、差を見せたいときは図。表を残すときの整え方と、表を1枚の図に変える手順を解説します。
※本記事の図は、ポサコの作例用に自作したものです。研究データ・氏名・所属はすべて架空です。文字サイズの目安はA0判を前提にしたポサコの制作基準によります。図の原則は一般的な作図・視覚化の考え方と、Web上で全文が公開されている Claus O. Wilke『Fundamentals of Data Visualization』に基づいています。