学会ポスターの3つの用途|同じ研究で作り分けて比べる
学会ポスターは、発表の形式によって役割が変わります。通路の人の足を止める「ひと目で伝える」、前に立って話す「説明しながら見せる」、発表者がいなくても読まれる「一枚で読み切る」。同じ研究から3枚ずつ作った9枚の作例で、題は同じまま、副題・本文の量・図の使い方がどう変わるかを比べます。
通路を行く人の足を止めたいのか、前に立って説明するのか、発表者がいない時間も読んでもらうのか。役割が違えば、本文の量も図の使い方も変わります。伝える結論は同じなので、題は 3 枚とも同じです。分野の違う 3 つの研究で、それぞれ用途の違う 3 枚を作り、並べて比べます。
13つの用途
通路を行く人の足を止め、問いと答えを短い時間で届ける。
向く場面参加者もポスターも多く、一枚の前にいる時間が短い会場。話を聞きに来てもらう入口にする。
発表者が前に立ち、図を指しながら話す。紙面は話の道しるべになる。
向く場面コアタイムに発表者が在席する、一般的なポスターセッション。
発表者のいない時間も、読み手が一人で最後まで読み切る。
向く場面会期中ずっと掲示が続く、発表者が不在の時間が長い、紙面をあとから読み返してもらう。
2同じ研究で比べる
左から「ひと目で伝える」「説明しながら見せる」「一枚で読み切る」。画像を押すと大きく表示します。
食品・栄養減塩みそ汁の官能評価
食塩を減らしたみそ汁で、だしの濃さを変えて好まれ方を比べた研究です。
経営・マーケティングポイント 2 倍デーの効果検証
スーパーの会員の購買データで、ポイント 2 倍デーが来店を増やしたかを確かめた研究です。
環境牛舎のにおいの広がりと苦情
牛舎のまわりで朝・昼・夜のにおいを測り、住民の苦情と重ねた研究です。
3何が変わるか
題は 3 枚とも同じ、結論を一文で書いたものです。用途が変わっても、伝えたい結論は変わらないからです。変わるのは、副題と本文の量、図表の数と役割です。
| ひと目で伝える | 説明しながら見せる | 一枚で読み切る | |
|---|---|---|---|
| 読み手 | 通りがかりの人 | 発表者の話を聞く人 | 一人で読む人 |
| 題 | 3 枚とも同じ。結論を一文で 減塩みそ汁は、だし 1.5 倍で通常並みに好まれる | ||
| 副題 | 何で確かめたかを一言で 食塩を 3 分の 2 にしたみそ汁を、40 人で飲みくらべました | 研究の方法を短く 食塩 0.6% のみそ汁でだしの濃さを変えた官能評価 | 対象と測ったものまで具体に 食塩 0.6% のみそ汁の、かつお・昆布だしの濃度と官能評価・うま味成分 |
| 本文の量(A0) | 約 500 字 | 約 1,000 字 | 約 2,000〜2,500 字 |
| 本文の文字 | 36pt | 32pt | 28〜36pt |
| 見出し | 4〜5 本。問いかけの形 | 5 本前後。番号を振る | 9〜11 本。番号を振る |
| 図表 | 主役の図を 1 点決めて大きく。図表は 3〜4 点と、数字を大きく示すカード | 結果の図を中心に 5〜6 点。話す順に並べる | 方法・結果・考察を図表で裏づける。表を含めて 6〜12 点 |
| 方法 | 一文で示し、詳しくは口頭で | 要点を短く | 対象・手順・解析・倫理まで |
| 締めくくり | 読み手にしてほしいこと(試す・話を聞く) | まとめの枠 | 考察・限界・結論・文献・連絡先 |
※ 本文の量は、本文の段落・要点の枠・数字のカード・文献を数え、題・見出し・キャプション・図表の中の文字は含めません。図表の点数は写真を除き、同じ範囲を並べた地図は 1 点と数えています。いずれも上の作例 9 枚の実測に基づく目安です。題・副題の例は減塩みそ汁の 3 枚から引きました。
4どれを選ぶか
学会の案内にある掲示の時間と発表の形式(コアタイムの有無、在席の時間)を先に確かめると、選びやすくなります。
5用途ごとの作り方の要点
- 副題で、何で確かめたかを一言添える
- 主役の図を 1 点決め、いちばん大きく置く
- 数字は大きなカードで示し、詳しい方法は口頭と連絡先に任せる
- 副題で、研究の方法を短く示す
- 図は話す順に並べ、指さしやすい大きさにする
- 本文は図を補う短い段落にし、話すことをすべては書かない
- 見出しに番号を振り、読む順を示す
- 方法は、読み手が確かめられる粒度で書く(対象・手順・解析)
- 限界と文献まで紙面に入れる
文字の大きさ・配色・図の扱いは、連載「伝わる学術ポスター 実例で学ぶデザイン」で詳しく解説しています。
6作例をさらに見る
※本ページのポスター画像は、ポサコで作成した作例です。研究データ・氏名・所属・町名はすべて架空です。写真は Adobe Stock を使用しています。本文の量・文字サイズの目安は当社作例の検証値に基づくもので、学会の規定・掲示サイズにより調整してください。