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デザイン

第1回 ポスターが「読まれない」3つの理由

学会のポスター会場で、あなたのポスターの前に立ち止まる人は何人いるでしょうか。研究の中身は良いのに素通りされてしまうポスターには、共通する3つの原因があります。この記事では、その3つを実例で確認し、内容を変えずに「読まれるポスター」へ直す方法を紹介します。

— 内容を変えずに、伝わるポスターにする方法

本シリーズが対象とするポスター:学会のポスターセッションで、発表者がポスターの前に立って説明する一般的な形式を想定しています。図を多数載せて発表者がいなくても読み切ってもらう掲示専用の形式は、文字サイズや図の量の基準が別になります。
シリーズ:伝わる学術ポスター 実例で学ぶデザイン(全6回) | 所要 約6分 | ポサコ

学会発表の準備で、ポスター作りは後回しになりがちです。実験と執筆に時間を使い、ポスターは発表直前に「スライドの内容を1枚に流し込んで」完成、という方は少なくありません。

しかし、ポスター会場で聴衆があなたのポスターを見る時間は、最初はほんの数秒です。その数秒で「読む価値がありそうだ」と判断してもらえなければ、どれだけ良い研究でも立ち止まってはもらえません。

まず、下の2枚を見比べてください。同じ研究・同じデータ・同じ結論のポスターです。左は「残念なポスター」、右は同じ内容を整理し直したものです。3歩離れて眺めたとき、どちらが「読んでみようかな」と思えるでしょうか。

同じ内容の学会ポスターのBefore/After比較。左は文字が詰まって読み順が分かりにくく、右は図表と見出しで整理されている。
同じ研究の学会ポスター。左:Before(残念な例)右:After(整理後)。研究の内容・データ・結論は同じで、文章を要約し、見せ方を変えました。※架空の研究データによる作例です。

左が「読まれない」のには、はっきりした理由があります。順に見ていきましょう。この3つは、裏を返せばそのまま改善の手順になります。

理由 1詰め込みすぎている

1詰め込みすぎ
症状:余白がなく、文字が紙面を埋め尽くしている。論文の文章をそのまま貼っている。

もっとも多い原因です。「せっかくの機会だから全部伝えたい」という気持ちが、かえって何も伝わらないポスターを生みます。文字量が多いほど、聴衆は読む前に諦めます。

ポスターは論文の縮小版ではなく、会話のきっかけを作る掲示物です。詳細は口頭で補えばよいので、紙面に載せるのは「立ち止まってもらうために必要な情報」だけに絞ります。

直し方本文の文字量は論文の1/10程度。1つのブロックは3〜4行まで。迷ったら「これを削っても、興味を持った人は口頭で聞いてくれるか?」で判断します。
Beforeポスターの背景セクション。段落が長く文字で埋め尽くされている。
Beforeの「背景」。緒言をそのまま貼ったような長い段落。この分量では、数秒では1文も読まれません。

理由 2どこから読めばいいか分からない

2動線が不明
症状:ブロックの並び順が不規則で、視線があちこちに飛ぶ。番号も矢印もない。

読者が紙面を辿る道は2通りです。縦の列を下まで読んで次の列の上に戻るか、横に読んで次の行へ下りるか。どちらになるかは段の数で決まり、A0縦を2〜3段に分ければ前者(新聞と同じ動線)、幅いっぱいに1段で組めば後者になります。どちらも成り立ちますが、1段だと1行が長くなりすぎるため、2〜3段に分けた前者を選ぶことが多いです。どちらとも決まっていない配置だと、読者は順路を探すことに労力を使い、途中で読むのをやめてしまいます。Beforeでは「結果」が紙面の3か所に飛んでいて、どこを次に読めばいいのか分かりません。

対策はシンプルで、縦の列ごとに読み進められる段組みにすること。それでも迷いが残る構成なら、見出しに番号(1. 背景 → 2. 方法 → …)を振れば確実です。

直し方2〜3段の縦組みにして「左上から下へ、次の列の上へ」で読めるようにする。見出しに通し番号を振ると、読み順が一目で伝わります。詳しくは第2回で扱います。

理由 3全部が同じ強さで並んでいる

3強弱がない
症状:どのブロックも同じ大きさ・同じ色・同じ文字サイズ。一番の売りが埋もれている。

紙面のすべてが同じ調子だと、聴衆は「この研究の何がすごいのか」を自力で探さなければなりません。数秒しか見てもらえない場面では、それは致命的です。Beforeでは、一番の結果(歩行自立が15.6ポイント高い)が長い文章の中に埋もれています。

伝えたいことに順位をつけ、1位だけを大きく・目立たせて見せます。結論や一番見せたい図を紙面の中で最も大きな要素にし、強調は1か所に絞るのがコツです。全部を強調すると、何も強調していないのと同じになります。

直し方主要な結果を、図とあわせて紙面で一番大きく置く(最上段が分かりやすい)。結論は枠で囲むなどして「ここだけは読んでもらう」場所を作ります。
Afterポスターの主要結果セクション。棒グラフ・推移の折れ線・フォレストプロットを大きく配置し、見出しで結論を述べている。
Afterの最上段。見出しそのものが結論(「1年後歩行自立は早期離床群で15.6ポイント高い」)を述べ、図を大きく置いています。数秒でも「何が言いたいポスターか」が伝わります。

まとめ:「減らす・並べる・際立たせる」

読まれないポスターの3つの原因は、裏返せばそのまま改善の手順になります。研究の中身を変える必要はありません。この3手順で、同じ内容がまったく違う伝わり方をします。

理由1の裏返し
減らす
文字量を論文の1/10へ。載せるのは立ち止まらせる情報だけ。
理由2の裏返し
並べる
縦の段組み+見出し番号で、迷わない読み順に。
理由3の裏返し
際立たせる
一番の結果を大きく1か所だけ。結論は囲んで見せる。

今日からできるチェックポイント

  • 本文の文字量は論文の1/10程度に収まっているか(1ブロック3〜4行以内)
  • 初めて見る人が、迷わず読み順をたどれるか(縦の段組み or 見出しに番号)
  • 「一番伝えたいこと」が紙面で一番大きな要素になっているか
  • 3歩離れてタイトルと結論が読めるか
  • 「削っても口頭で補える情報」を思い切って削ったか
ポサコで実践するには

3つの改善を、テンプレートがそのまま助けてくれます

  1. 減らす — テンプレートの各ブロックには適正な文字量の目安があり、流し込むだけで「詰め込みすぎ」を防げます。
  2. 並べる — 段組みがあらかじめ設計されたレイアウトを選ぶだけで、視線の流れに沿った配置になります。
  3. 際立たせる — 結論ブロックや強調の見せ方がテンプレートに組み込まれているため、「どこを大きくするか」で迷いません。
個人で発表される方へ

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テンプレートに沿って入れ替えるだけ。学会前でも、形になったポスターから始められます。

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研究室で品質をそろえたい

メンバーが作るポスターの質がバラつく、指導に時間がかかる——テンプレートを研究室で共有できます。

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※本記事のポスター画像は、ポサコで作成した作例です。研究データ・氏名・所属はすべて架空です。デザインの原則は一般的な作図・視覚化の考え方に基づいています。

VOICE レイアウトが先に決まっているから、
伝えたいことが整理できる